遺産分割協議の進め方

遺産分割協議の進め方

分割の方法

ご家族等がお亡くなりになりますと、被相続人(お亡くなりになられた方)の財産は相続人に相続されます。
その財産は、一旦相続人全員の共有財産となります。
そこで、その共有財産となったものを、各相続人に分配する必要が生じます。

遺産分割は、遺言がある場合には、被相続人が生前指定した「指定分割」に従います。
遺言がない場合は、相続人全員の協議による「協議分割」により行うことになります。

指定分割 被相続人が遺言によって指定した分割方法です。協議分割に優先します。
協議分割 相続人全員の協議により行う分割方法です。
全員の同意が必要で、一部の相続人を排除したりした場合は、協議は無効になります。
※なお、遺言による指定分割が優先されるのですが、相続人の協議により、遺言と異なる内容で協議がまとまった場合には協議分割が優先される場合があります。

実際の分割方法には以下のような方法があります。お持ちの資産によって使い分けることが大切でしょう。

現物分割 遺産そのものを現物で分ける方法です。
現物分割では、各相続人の相続分を均等に分けることはまず不可能です。どうしても、相続人の間で格差が発生することもあります。その際は、その差額分を金銭で支払うなどして、均衡を図ります。
換価分割 遺産全部を売却して、その現金を分割するという方法です。
子供は既に全員家を持っている場合など、被相続人が住んでいたマンションを売って分割する場合などです。
代償分割 遺産の現物(例えばマンションの1室)を1人が相続し、その取得者が、他の相続人に対し相続分相当を現金で支払うという方法です。
共有分割 遺産を相続人が共有で所有する方法です。
共有名義の不動産は、売却時などは共有者全員の同意が必要となります。

遺産分割協議がまとまったら、必ず遺産分割協議書を作成しましょう。
遺産分割協議書は相続の手続きにおいて何かと必要になります。
例えば、不動産や自動車の名義変更、預貯金を引き出す場合にも必要となるケースがあります。

配偶者の居住のための権利

1.配偶者短期居住権

 令和2年4月から、配偶者短期居住権が新設されます。配偶者が、相続開始の時に被相続人が所有していた建物に無償で居住していた場合は、遺産分割によって当該建物の帰属が確定するまで、あるいは相続開始の時から6箇月を経過する日のいずれか「遅い日」までの間、引き続いて無償でその建物を使用できるという規定が設けられます。
 この規定により、被相続人が配偶者以外の者に建物を遺贈したような場合でも、最短でも6箇月間は当該建物に居住することができます。

2.配偶者居住権

 1.では、配偶者の短期居住権をご案内しましたが、同じく令和2年4月から、配偶者が、相続開始の時に被相続人が所有していた建物に無償で居住していた場合は、配偶者に終身又は一定期間当該建物の使用を認める権利も創設されます。この規定により、遺産分割又は被相続人の遺言等によって配偶者居住権を取得させることができることになりました。
 例えば従来は、「夫が亡くなり、子供2人と相続人となった」場合などは、妻が不動産を取得すると、それ以外の財産は子供に取得させる必要があったりして、妻には生活に必要な「預金」などはまわらないようなこともありました。しかし、被相続人が配偶者に「配偶者居住権」を取得させる旨の、遺贈又は死因贈与があれば配偶者居住権を取得できるここととなり、不動産の所有権を取得するよりも、他の遺産分割に加われる可能性が拡がるようになるものです。

持戻し免除の意思表示の推定

 令和元年7月の法改正で、持戻し免除の意思表示の推定に関する規定が設けられました。『持戻し』とは、共同相続人の中に、過去に生前贈与等を受けた方がいる場合は、相続財産を計算する上で、その贈与を受けた財産分を一度全体の相続財産に加えて計算しましょう、というものです。改正前の民法でも、この持戻し免除の規定はあったのですが、それは、持戻しを免除する意思表示が必要でした。
 今回の法改正では、婚姻期間が20年以上の夫婦間において、一方の配偶者が他方配偶者に贈与した居住用建物又はその敷地は、持戻し免除の意思表示があったものと推定しましょうという規定が設けられました。これにより、配偶者の居住する権利が一層守られやすくなりますね。

預貯金の払戻し制度の創設

 平成28年12月19日の最高裁判例により、共同相続人全員の同意がなければ、預貯金の払戻しができないこととなった。一方で、そうなると各種被相続人に関する費用の支弁が困難となる事象も生じてきている。そこで、令和元年7月の法改正で、
①共同相続人が単独で、預貯金の額の3分の1に法定相続分を掛けた額まで、払戻しができることになりました。ただし上限額は150万円までです。
②裁判所が認めた場合の仮分割について、その要件が緩和されました。