遺言の執行

遺言の執行

 遺言の検認(公正証書遺言の場合は必要なし)が終わると、具体的な相続手続きとなります。遺言内容を実現する手続きですが、多くの場合、遺言で「遺言執行者」を指定することが多いのです。遺言執行者は必ずしも指定する必要はありませんが、手続きの円滑な進行を考えれば、遺言執行者を指定しておいた方がいいでしょう。
 遺言執行者の指定は遺言によって認められていて、生前の取り決め等は無効になります。また、遺言執行者は複数名指定しておくことも可能です。手続きの内容によっては複数名いる方が便利なことも多のです。なお、遺言で指定を受けた人が遺言執行者を辞退することも認められています。
 遺言執行者の指定がなかったときは、相続人や利害関係人が家庭裁判所で選任の請求を行います。
なお、令和元年7月施行の法改正により、以下の、遺言執行者の権限の明確化が図られました。
 ①対抗要件具備の権限(第1014条第2項)
 ②預貯金についての払戻し・解約に関する権限(第1014条第3項、第4項)
 ③遺言執行者の法定地位、遺贈義務者との関係を明確にする規定の見直し(第1012条第1項、第2項)
 ④遺言執行者の復任権に関する規律の見直し(第1016条)

遺言の執行手順

遺言の執行手続に関する手順は、概ね以下のとおりです。
 1 財産目録を作る
  遺言者の財産目録を作成し、それには不動産の登記簿や権利書、預金通帳なども揃えます。
 2 遺産内容に沿って、相続割合の指定をし、実際に遺産を分配します。また、名義変更や登記申請も行い
  ます。遺贈の対応も行います。
 3 認知の遺言がある場合は、戸籍の届出をします。
 4 遺言に相続人廃除又は廃除の取り消しの内容がある場合は、家庭裁判所に申し立てを行う

遺言執行者

 遺言をする人は、遺言執行者を指定することや、遺言執行者を決めることを委託することができます。この遺言執行者に指定された人は、相続財産の管理や、その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を持つことになります。したがって、遺言執行者がいる場合には、相続人といえども、相続財産の処分その他遺言の執行を妨げるべき行為をすることはできません。
 また、遺言執行者がいないときや亡くなった場合でも、相続人や受遺者などの利害関係人が請求すれば、家庭裁判所が選任してくれます。なお、未成年者および破産者でなければ、相続人や受遺者も遺言執行者になれます。
 なお、遺言執行者の指定がないと、預貯金の解約などに銀行所定の書類への相続人全員の押印や遺産分割協議書と、印鑑証明書の提出を求められるのが一般的です。遺言執行者の指定があれば、押印は遺言執行者だけで預貯金の解約などを認めるのが一般的です。
 ただし、相続人や受遺者の1人が遺言執行者にもなっている場合には、金融機関によっては、遺言執行者の押印だけによる預貯金の解約には慎重に対応するケースもあるようです。なお、内容は法改正によって是正されるでしょう。

専門家を利用しよう

 遺言執行など複雑な手続きの処理をまかせるなら、やはり専門知識をもった行政書士や司法書士、場合によっては税理士等の専門家に、その職務を依頼することが望ましいです。
 当事務所では、みなさま方の最初の窓口となり、それぞれの手続きにおいて、提携している各専門家に仕事を依頼しますので、みなさま方がそれぞれの専門家を訪ねて歩く必要がありません。もちろん、事前にご依頼者の同意を得たうえで進めます。
 特に、高齢者、遠くに住んでいる方やサラリーマンの方の場合、煩雑な作業が大きな負担となります。不動産や預金の名義変更などだけでも、大変な手間がかかります。また、相続人等の利害関係者ですと中立の立場にあっても、そう思わない他の相続人も現れることもあります。そのため、行政書士、弁護士などの専門家に依頼することも選択肢の1つとなるでしょう。