遺言と遺留分

遺言と遺留分

遺留分とは

最近はご相談においでになる皆さま方も法律知識をお持ちの方が多く、遺留分については充分知っているという方も多いとは存じますが、改めて説明してみたいと思います。
多くの皆さんもすでにご存じのとおり相続人には最低限留保された相続財産の一定割合があります。
それが遺留分です。

なぜ遺留分などが重要な意味を持つかというと、被相続人(亡くなられた方)が遺言などで相続分を指定した場合、その指定した相続分が優先されるのです。

ですから、例えば奥さんと3人の子供がいる男性が遺言をして死亡したとします。

その男性は末っ子に財産のすべてを譲ると遺言していたとしても、奥さんと2人の子供にも「私たちにも少し分け前をくださいよ」という権利があるのです。
では具体的な遺留分を見てみましょう。

相続人 割合
配偶者のみ 2分の1
配偶者と子 2分の1
配偶者と直系尊属 2分の1
配偶者と兄弟姉妹 2分の1
※兄弟姉妹には遺留分なし
子のみ 2分の1
直系尊属のみ 3分の1
兄弟姉妹のみ なし

上記の割合は、被相続人の財産に対する割合です。
そして、各人の遺留分は法定相続分×上記遺留分の割合で算出できます。

上記の例の場合、奥様に4分の1、2人の子供にはそれぞれ12分の1の遺留分があります。
なお、遺留分というのはあくまでも相続人がそれを主張する場合に問題になりますが、上記の遺言に対し皆が納得していて、各人が請求しない場合は問題になりません。

また、欠格や排除を受けている場合には遺留分を主張することはできません。
なお、遺留分を主張する場合は、原則として被相続人の死を知ったときから1年以内に
「遺留分減殺請求」をしなければなりません。

遺言でも侵せない遺留分

いくら自分の財産を思い通りに処分したいと思って遺言をしても、上記の遺留分を侵害することはできません。
もちろん遺留分を侵害された相続人がそれを主張しなければ問題にはなりません。
多くの方はそこを見誤って遺言をしてしまうケースが多いのです。

ですから、安全なのは遺留分を見越して遺言の内容を検討することでしょう。

遺留分の放棄

上記で、「遺言でも侵せない遺留分」と記しましたが、相続人に遺留分を放棄させる方法はあります。
それは、「遺留分の放棄の許可」です。

遺留分減殺請求の効果


 令和元年7月施行の法改正により、遺留分減殺請求の効果について変更がありました。従来は、遺留分減殺請求権が行使されると、物権的効果が生ずるとされており、例えば不動産などでは対象財産について共有の登記がなされることが多く、円滑で迅速な遺産分割が阻害される場合がありました。
 そこで、改正法では、遺留分に関する権利行使によって、遺留分侵害額に相当する金銭債権が、遺留分減殺請求をした方に生ずるように変更されました。

 また、遺留分権利者から、上記の金銭債権の請求を受けた受遺者又は受贈者が、金銭を直ちに準備できない場合、受贈者又は受遺者は裁判所に対し、金銭債務の全部又は一部の支払いについて相当の期限の付与を求めることができることとなりました。ですから、直ちに支払いをしなくてもよい、ということになります。

遺留分の算定方法の見直し



 現行法では、遺留分を算定するための基礎財産の価額に参入する贈与に価額について、原則として相続開始前の1年間になされた贈与が対象になることとされていますが、判例では、相続人に対する贈与は、法第1044条において法第903条を準用するとされていることから、過去1年間に限らず、全ての贈与等が算入されるとしている。それでは30年前に結婚のため受けた贈与なども含まれるため、関係者の法的安定性が阻害される可能性があるため、令和元年7月の法改正で、相続人に対する生前贈与についても期間を限定し、相続開始前の10年間に贈与されたものに限り、遺留分の算定に含まれることとなりました。